調理設備を持ち、できたてのフードを提供するキッチンカー(フードトラック/移動販売車)。最近は街なかや公園、そしてさまざまなイベントでよく目にします。
キッチンカーに、現代の多様な支払い方法に対応するキャッシュレス決済端末(スマート決済端末/モバイル決済端末)を装備することで売上を伸ばしているのが、中久フードサービスです。
キャッシュレス決済によって、どのようにキッチンカーの売上が上がるのかを、同社代表・中西辰幸さんに聞きました。
キッチンカーの企画・運営などを行う愛知県の会社。2015年設立。フードトラックを5台所有し、からあげ、魯肉飯(ルーローハン)、丼もの・麺もの、ベルジャンフリッツ、各種カクテルなど、幅広い飲食ジャンルを提供。どの領域も、プロが開発した本格派である点が強み。ニーズがあれば日本全国に出張する。あわせて、名古屋市立大学 滝子キャンパス内のカフェテリア、waichi@TAKI TERIAも運営。
もともとキッチンカーでは、どのような支払い方法に対応していましたか?
現金と、PayPayなどの一部QR決済です。PayPayはQRコードが載ったパネルを置いて対応していました。
そこから、なぜキャッシュレス決済端末を導入することになったのでしょうか?
昨年より、ある大学のカフェテリアを当社で運営することになったのがきっかけです。カフェテリアの運営では、感染症対策から、非接触でメニューを注文できるモバイルオーダーのシステムを導入することになりました。ただ、モバイルオーダーの実装に際しては、各決済ブランドと個別に契約せねばならず、それはちょっと大変すぎるなと思っていたところでした。
そのタイミングで、キャッシュレス決済サービスを手掛けるPayCASであれば、各決済ブランドと個別に契約せずともPayCASとの契約に一本化できると人から紹介を受けたのです。
しかも、PayCASの移動式決済端末「PayCAS Mobile」であれば、キッチンカーでも使えると聞いて。それが決め手となり、カフェテリアとキッチンカーの両方に、PayCAS Mobileを計4台導入する運びとなりました。
キッチンカーで、モバイル決済端末を使いたいと思った理由は?
キッチンカーでは、さまざまな場所に赴きます。郊外や山奥など、Wi-Fiが整備されていない環境も珍しくありません。
そのような環境でキャッシュレス決済を行うには、スマートフォンでテザリングをしなければならず、それがけっこう面倒だなと感じていました。加えて、レシートを発行するために、モバイルプリンターも置かなくてはいけない。うちはPOS用にタブレット端末も使っているので、その時点で狭いキッチンカー内がごちゃごちゃするうえ、それぞれの端末の電池の減りが早く、そのケアもしなければいけませんでした。
実はもともと、あるQR決済ブランドの決済端末を導入していたのですが、そうした煩わしさからスタッフが次第に現場に持っていかなくなり、ほとんど放置状態になってしまっていたのです。
それがPayCAS Mobileであれば、スマホと同じ回線のSIMを内蔵しているので、基本的にどこでも電波がつながった状態で稼働できます。そうなるとテザリングの必要がない。かつプリンター内蔵型なので、プリンターを置く必要もない。これはキッチンカーにいいなと思いました。
対応する決済方法は?
クレジットカード、QR決済、電子マネーの3種すべてです。PayCAS Mobileの導入で、結果的にキャッシュレス決済ブランドのほぼすべてに対応できる形となりました。
キッチンカーで、多様な支払い方法に対応するメリットは何でしょう?
さまざまなお客さまからの機会損失をなくす、有効な一手になることですかね。
実は、当初は社内でもPayPayに対応していればOKでは?という話が出ていました。ただ、うちは名古屋城をはじめ外国人のお客さまが大勢訪れる場所でもよく出店しています。そこではPayPay以外のさまざまなキャッシュレス決済を希望されることも多いのです。それに今後はコロナ禍が落ち着き、インバウンドがより伸びることは確実だろうと考え、多様な支払い方法に対応しておく必要があると思いました。
実際にPayCAS Mobileをキッチンカーに導入してみて、いかがでしたか?
売上の部分では、かなり貢献していると思います。
それは、どういうことでしょう?
言い方はあまりよくありませんが、人はキャッシュレスだと、財布の紐がだいぶ緩むんですよね(笑)。だから、予定より何かを1~2個多く買うといったことが、よく起こります。
そもそもキッチンカーは、「衝動買い」に支えられている商売でもあります。このキッチンカーでそれとあれを買おうと厳密に決めているお客さまより、なんとなく美味しそうでにぎやかなものを目にして「これにしよう!」となる方が多い。
そうすると支払いの際に、たとえば千円札を3枚出すのと、同じ金額でもスマホでピッと済ませるのでは、抵抗感がだいぶ違います。そもそもキャッシュレスで支払うお客さまは、メニューを選ぶ時に、合計金額を計算しないことも多い。現金を出す必要がないので、当然といえば当然です。
そういったようにキャッシュレス決済は、お客さまの「衝動買い」や「もう一品!」といった行動を、何気なく後押ししてくれる存在だと実感しています。
興味深いお話ですね。実際、キャッシュレス決済により、売上はどれくらい上がるものですか?
あくまで体感値ですが、現金のみに対応する場合に比べれば、15%くらいは上がる気がします。だから、キャッシュレス決済端末の手数料を払ってでも、メリットは十分にあると思いますね。今や多い時は、お客さまの支払いの2/3ほどが、キャッシュレスです。
インバウンド需要に関しては、いかがでしたか?
それこそお花見シーズンなどは、岡崎城や名古屋城にものすごい数の外国人客が訪れますが、多くの方がクレジットカードをはじめキャッシュレス決済が可能な店を探しています。そのような中、うちはキッチンカーの外側に対応可能なキャッシュレス決済ブランド一覧を貼り出しているので、それを目がけて来店してもらうことも多いのです。
他のキッチンカーにおける、キャッシュレス決済の普及状況はいかがでしょうか?
ざっと見たところ、他のお店は、現金とPayPayのみ対応が多い気がします。私たちのような移動販売を行う事業者こそ、SIMの入った端末を重宝すると思いますので、今後こうしたモバイル決済端末が普及する余地は非常に大きいと思います。
あらためて、PayCAS Mobileが中久フードサービスにもたらしたものとは?
もちろん売上が上がりやすくなったことや、インバウンド需要の機会損失が減ったことが何よりですが、キャッシュレス決済の価値を社内スタッフ全員で共有できたことも大きかったです。前述の通り、以前からキャッシュレス決済のツールは社内にありましたが、タブレット・プリンター・決済端末のすべてを現場に持参するのが大変で、ほぼ使われていませんでした。
それが、SIM・プリンター内蔵型のPayCAS Mobileになったことで、スタッフが現場に抵抗なく持っていくようになった。そして、いざ使ってみたら、PayCAS Mobile経由の売上が全体の何割も占めることが体感できた。
その結果、私が口で言ってきたことよりも遥かに、キャッシュレス決済の重要性が社内に伝わる形となりました。
今後の中久フードサービスの目標を教えてください。
キッチンカーは、必要とする場所に呼ばれてなんぼの商売です。その点、売上を上げれば上げるほど、いろいろなところからお声がかかりやすくなります。そしてたくさんお声がかかるようになれば、人員も車両台数も増やすことができ、それによってキャパシティが広がってより呼ばれやすくなる。そのような好循環を、いっそう進めていきたいなと考えています。
現状、当社はキッチンカーを5台所有し、メニューも多岐にわたるので、かなり幅広いニーズに応えられると自負しています。便利なキャッシュレス決済端末も武器にしながらより突き詰め、全国のイベント主さんから真っ先にお声がかかるような日本一のキッチンカー会社を目指します。