新規オープンを機に、売店のレジを完全キャッシュレス化したスポーツ施設があります。バスケットボールのBリーグ・琉球ゴールデンキングスが本拠地とする、沖縄アリーナです。
同施設は、キャッシュレス化により、売店の回転率が大幅に向上。さらには、海外ブランドも含めた幅広い決済サービスが使えるようになり、大規模な国際大会やライブにも十分対応できる施設となりました。
ただ、キャッシュレス決済の普及率が高くない沖縄県にあって、完全キャッシュレス化のハードルは高くなかったのでしょうか。そして数ある決済システムの中から、なぜPayCASを選んだのでしょうか。
施設を運営する沖縄アリーナ株式会社・仲間陸人さんに伺いました。
沖縄市諸見里のコザ運動公園内にある多目的アリーナ。2021年4月開業。バスケットボール、バレーボール、格闘技などのスポーツ興業にくわえ、人気アーティストのライブ、音楽イベント、展示会場などに利用される。1万人規模の人員を収容可能。Bリーグ・琉球ゴールデンキングスのホームコート。
まずは、沖縄アリーナにキャッシュレス決済システムを導入することになった経緯を教えてください。
やはり、新型コロナ感染拡大の影響が、ひとつのきっかけとなりました。売店のレジをキャッシュレスにすることで、現金受け渡しによる接触をなくし、より衛生的に販売を行えるようにしたいなと。もちろん、キャッシュレス化で利便性を高められる点も魅力でした。
そこで施設が開業する’21年4月にあわせ、売店にキャッシュレス決済システムを導入する運びとなったんです。もともと琉球ゴールデンキングスは当施設ができるまで、沖縄県内のいくつかの体育館でホームゲームを行っていました。その際、売店での決済は現金支払いが基本で、一部、簡易版のキャッシュレス決済端末(スマート決済端末、モバイル決済端末)を使っていました。
今回、現金決済との併用ではなく、「完全キャッシュレス」にしたのはなぜでしょう。
正直、沖縄にはまだキャッシュレス文化があまり根付いていません。一方で完全キャッシュレス化は、来場者と運営側の双方に衛生面および利便性のメリットをもたらします。だからこそ新施設の開業をまたとないチャンスととらえ、完全キャッシュレス化を決断しました。
キャッシュレス決済システムの選定は、どのような条件で進めましたか。
まずはPOSと連動できることを条件としました。当社では、沖縄アリーナ開業にあわせて施設内にセントラルキッチンを開設し、仕入れ・調理・販売までを一気通貫で行う飲食事業を開始しました。その運営にあたり、キッチンと売店のPOSを連動させ、何がどれだけ売れているのかを常時把握する必要が出ましたので、POS連動できることが必須条件となった形です。
それともうひとつ、来場者さまの利便性を高めるために、幅広い決済ブランドに対応していることも重視しました。とりわけ同施設では、'23年8月にバスケットボールの世界大会が行われます。それもあって、海外からのお客さまも安心して迎え入れられるよう、銀聯やアリペイなど海外決済ブランドを含めた対応ブランドの多さにはこだわりました。
そうしてPOS連動ができるキャッシュレス決済システムであり、かつ幅広い決済ブランドに対応することをふまえた結果、必然的に2~3の決済システムに絞られました。
そこから最終的にPayCASを選んだ理由を教えてください。
大きな決め手のひとつとなったのが、決済スピードです。他社さまの決済端末も試用してみたのですが、決済スピードではPayCASの端末が明らかに速く感じました。
それとPayCASは、導入コストもランニングコストも比較的リーズナブルで、そこも魅力でしたね。くわえて当社は、長期的な視点でキャッシュレス決済を導入したいと考えていたので、運営母体の強固さも意識しました。
こうした検討を重ねた結果、同施設ではPayCASの据え置き型の決済端末「Verifone P400」を、売店全10店に計70台導入しました。またラグジュアリーな個室で観戦できるスイートルームには、「Verifone V400m」を10台導入しました。こちらは、Wi-FiでPOS連動させて持ち運べる形にし、よりフレキシブルで丁寧に対応できる決済スタイルとしました。
実際にキャッシュレス決済システムを運用してみて、いかがでしたか。
やはりお客さまからも、スタッフからも、決済スピードが速いとの声が聞かれています。お客さまが財布を出して支払いをする時間や、スタッフがお金を受け取ってお釣りをわたす時間をカットできるので、現金支払いと比べ10秒前後短縮される感覚があります。
スタジアムの売店という性質上、特定のタイミングにお客さまが集中することは避けられません。たとえば試合前は通常、開始30分前になると、3,000人くらいのお客さまが一気に来場します。またハーフタイムの20分間にも、1,000人以上のお客さまが売店を利用します。短時間でこれだけのお客様に売店を利用していただくためには、1機ごとの処理スピードの速さが重要です。数秒の違いであっても、行列の長さがかなり変わってきますので。
行列をゼロにすることはさすがに難しいですが、このシステムであれば行列ができても進みが早いので、お客さまはそれほどストレスを感じずにご利用いただいているのではないでしょうか。
それと、端末の操作がシンプルで扱いやすい点も重宝しています。当施設の売店では、その日初めて来たアルバイトさんがレジに入ることが少なくありませんので、ありがたいですね。かんたん・スピーディーに操作できるので、スタッフがあたふたせず、そのぶんお客さまへのホスピタリティを高められているのかなと思います。
完全キャッシュレスとしたことで、運用面でも小さくないメリットが生まれています。
運用側へのメリットは何かありましたか?
現金を扱わなくてよくなったことです。以前、体育館で運用していた時は、数百万円にのぼる1日の売上を、警備会社を呼んで運んでもらっていました。完全キャッシュレスになったことで、その工程がなくなりました。アリーナになって売店事業の規模も拡大し、今では1日の売上が飲食だけで1千万円を超えることも少なくありませんので、現金を扱うリスクがなくなったのはメリットだと感じています。
あわせて、お釣り用の小銭を用意する手間と、両替の手数料も削減できました。
現金が使えないことに対して、お客さまからの不満はありましたか。
「現金も使えるようにしてもらいたい」といったお声も、いくつかはいただきました。そうしたお声もふまえて当施設では、施設内で使えるプリペイドカードを、救済措置的に販売しています。したがって、現金しか使えないお客さまが、来場したのに買い物できない状況になってしまうことはありません。ただ、プリペイドカードを利用されるお客さまは、今ではだいぶ少なくなっていて、おおよそ8,000人の来場者のうち20人くらいの規模感です。
端末の動作状況や通信状況は、いかがですか。
不具合はあまり起きていません。また、不具合が起こった時に問い合わせられる相談窓口が365日、8時半から21時まで開いているので、その点も安心感があります。売店だけでなく、スイートルームのWi-Fi連動システムも、つつがなく運用できています。
今後、PayCASに期待したいことや要望はありますか。
各決済ブランドの動きに関しては、流動的な部分がありますので、今後も対応可能な決済ブランドを随時拡大していただけるとありがたいです。それと、決済端末で電子マネーのチャージまで行えると一層便利になりますので、ご検討いただけると幸いです。
あらためて、今回のキャッシュレス決済システム導入を、どのようにとらえていますか。
来たる世界大会の際には、海外からも多くのお客さまが当施設に来場されることが予想されます。そこにも間に合う形で、大規模な国際大会に十分対応できる決済システムを導入できたことは、当施設にとって重要な一歩だと思います。
アリーナ内のどのエリアにおいても、キャッシュレスでスピーディーに決済できることが、沖縄アリーナの一つのウリになりました。