時には100万円を超える診療費を現金で受け取る際の、オペレーションの負担が大きい……。そのような歯科の課題解決を目指し、キャッシュレス決済端末(スマート決済端末、モバイル決済端末)「PayCAS Mobile」を導入したのが、岡山市の滝歯科医院です。
導入の結果、高額の現金を扱う負担を削減できたほか、持ち運び自由なモバイル端末ならではの“意外なメリット”も享受できていると言います。
同医院の瀧 潤一郎 院長に、PayCAS Mobileを選んだ理由と、実際に運用してみて気がついた具体的なメリットを聞きました。
滝歯科医院について
岡山県岡山市で3代にわたって続く地域密着型の歯科医院。「患者さんとともに歩む医療」をモットーに、コミュニケーションに時間をかけながら、患者にベストな治療法を選んでもらうことに力を注ぐ。インプラントや歯列矯正といった自費診療を利用する患者も多い。
高額現金を扱うのは、心身両面で負担が大きい
もともと診療費の決済はどのように行っていましたか?
現金決済が主体ですが、高額の自費診療に関しては、銀行口座に振り込んでいただくケースもあります。
そうした決済スタイルについて、何か課題は感じていましたか?
一番の課題は、高額の診療費を現金で受け取る際に、紙幣を数える必要があることです。特にお札の枚数が3ケタともなると、金額も金額ですので慎重に確認しなければなりません。それこそ私が診療室の角に行き、まるで銀行の行員のように、お札をバサバサと数えていました。これにはオペレーション的な負担がありましたし、過去にはミスが起こってしまったこともありました。
患者さまとしても、自分が差し出したお金を何度も確認されるのは、あまり気分がいいものではないですよね。そもそも高額の現金をクリニック内で数えること自体がちょっと生々しいですし、受け取った後にレジに置いておく心理的負担もあります。
高額の現金を受け取るケースは、頻繁にあるのでしょうか?
とりたてて高額診療に特化しているわけではありませんが、当医院ではインプラントや歯列矯正も扱っているため、やはり高額の自費診療が一定数以上は発生します。たとえばインプラントなら、1本でおおよそ30万円かかるので、それが4本になれば3ケタを超えます。
高額な診療費のオペレーションについて検討していたときに、患者さまから「クレジットカードなら事後の支出管理もしやすいので、決済できるようにしてもらいたい」とご要望がありました。そこで、この機会にクレジットカード決済を始めることに決め、2022年6月に端末を導入しました。
数ある端末のなかから、キャッシュレス決済端末「PayCAS Mobile」を選んだ理由を教えてください。
まずはどのような端末が良いかを、インターネットで調べました。
当院では、レセプションにカルテのデータをつなげたり、2023年4月から原則義務化されるオンライン資格確認の導入を行ったりするため、既に多くのネット回線を使っています。これ以上増やすにはそれなりの規模の工事が必要な状況だったため、着目したのが回線を新たに引く必要のないワイヤレスの決済端末でした。
その結果、選択肢はほぼPayCAS Mobile一択でした。調べてみて分かったことなのですが、端末自体はワイヤレスであっても、実際は回線を引く必要のあるものがほとんどでした。PayCAS MobileであればソフトバンクのSIMに対応しているので、回線を新たに引くことなく、スマートフォンと同じように完全ワイヤレスで使えるなと思いました。
より納得して決済いただけるようになった
完全ワイヤレスで使えること以外には、どのようなメリットを感じましたか?
これまで何か新しいシステムを導入する際には、セキュリティ面での要件を満たすことに相当な手間を要しました。その点PayCAS Mobileであれば、その部分の手間もかからないだろうと感じました。
また、据え置き型の端末と違い、自由に持ち運べる点も魅力でしたね。
実際に運用してみて、いかがでしたか?
まずは自由に持ち運べる点を生かし、決済端末を診療台まで個別に持っていけるという点が、なかなか便利だなと感じました。これなら他の患者さまに額面を知られることなく決済していただけますし、何より患者さまにモニターを見ながら納得した上でお支払いいただけます。現金決済の場合、いざレセプションで会計となった際に「やっぱりここはどういうことなのでしょう?」と診察室まで戻って確認されるケースもあったので、それを減らすことにもつながっています。
もう一つ患者さま視点で言えば、高額の現金を持ち運んでいただかなくてOKになった点も、明確なメリットです。患者さまの負担が小さくなりますし、会計時に高額の現金を扱う“生々しさ”もなくせます。
もちろん、今も高額の診療費を現金で支払われる患者さまはいらっしゃいますし、そもそも保険診療の支払いに関しては今も多くが現金です。ですが、患者さまが決済方法を選べるようになった点は、医院として小さくないアップデートだと感じています。
医院としてのオペレーション面では、どのようなメリットを実感していますか?
やはり、高額の現金を数えなくてはいけない場面が減ったのが、ありがたいです。紙幣を数えなくてよくなった分は、患者さまとのコミュニケーションなど、当医院が注力する部分に割けます。またキャッシュレスであれば数え間違いのミスも起こりませんし、高額の現金を保管する不安も発生しません。現金を扱う際のオペレーションの負担が、物理的にも精神的にも減った形ですね。
あわせて経理業務も楽になりました。これまでは、各診療ごとに診療費と内訳が書かれた売上票を作成し、銀行振込が発生していれば振り込み履歴と照らし合わせる必要がありました。対してPayCAS Mobileでの決済であれば、必要項目を満たしたレシートがその場でプリントされ、あとは税理士さんにそのまま渡すだけでOKとなります。
それと意外なところでいえば、出張オペをした際の請求の手間も、大幅に削減されました。
日本各地の出張先にも決済端末を持っていける
具体的にどのような手間が削減されましたか?
私は他の歯科医院から依頼を受け、インプラントの出張オペを各地で行っています。その際の診療報酬は、これまでなら請求書を後日FAXで送り、お振込いただいたら経理が請求書と照らし合わせるといったオペレーションが発生していました。ですが、PayCAS Mobileであれば出張先に端末を持っていけるので、その場で請求書をお渡ししてカード決済してもらえます。なので、後日行っていたオペレーションをごっそりカットできるようになりました。
通常時は出張オペが月に1~2回程度ありますので、その部分の効率化もなにげに大きいです。
これは余談ですが、もしキャッシュレス決済を導入しなかったら、数年以内に現金を数えるキャッシャーを導入するつもりでした。キャッシャー自体がそれなりに高額ですし、設置するにはレセプションの一部に穴を空ける工事が必要でしたので、そのコストもカットできました。
端末自体の操作性については、いかがですか?
シンプルで誰でもかんたんに使える仕様になっています。それと操作に対するレスポンスや、レシートが出てくる速度が速いため、決済が完了するまで1分とかからない印象です。
決済端末の導入費や運用費に関しては、いかがですか?
前述のように、回線工事をしたりセキュリティを整えたりする労力と費用がかからない点をふまえると、費用面でも納得しています。
診療費決済のあり方について、今後どのような展望を描いていますか?
現状、当医院でのキャッシュレス決済手段はクレジットカードのみですが、将来的にはQR決済や電子マネーも使えるようにすることで、患者さまの利便性は一層高まると思います。特に当医院は学生や子育て世代の女性も多く来られるので、その部分のニーズは高いだろうなと感じています。
一方で保険診療の場合、基本的にキャッシュレス決済の手数料は、医院側が負担する形です。したがってすべての決済をキャッシュレス化するのは、経営面での負担が大きくなってしまうのが現状です。キャッシュレス化が患者さまにもたらすメリットは明確なだけに、今後、手数料の部分の制度改正がなされることに期待しています。
いずれにしても、当医院の何よりもの使命は、歯で困っている方を助けることです。それを前提としながら、今後も最適な決済スタイルを整えていきたいと考えています。