旅館やホテルなどの宿泊施設では、クレジットカードをはじめキャッシュレス決済を行う機会が多くなります。だからこそ、便利なキャッシュレス決済端末(スマート決済端末/モバイル決済端末)の導入で、お客さまやオペレーションの利便性が大幅に向上するケースが少なくありません。
それを体現する宿の一つが、上田温泉 祥園・寿久庵です。女将の久保美奈子さんに、新端末導入の経緯と、その効果を聞きました。
上田温泉 祥園・寿久庵について
長野県上田市で、明治38年から約120年にわたって料亭旅館を営む老舗。近年は「快眠の宿」をコンセプトに、良質な睡眠をもたらす食事や設備に注力する。地元の人たちには、宴会や七五三、法事などの集まりの場としても愛用される。
お客さまのカードをいったん預かることに抵抗が
以前は、お客さまからのお支払いを、どのような方法で決済していましたか?
以前からクレジットカード用の決済端末を使っていて、現金、クレジットカード、そしてPayPayなどのQR決済に対応していました。QR決済は、バーコードのついたパネルをお客さまのスマートフォンで読み取っていただくスタイルです。ただ、ある程度まとまった金額になる宿泊業という業態がら、クレジットカードを使われるお客さまが多く、宿泊客の約8割がクレジットカード払いです。
なお当宿では、宿泊料の決済をチェックインのタイミングで行い、追加料金が発生した場合はチェックアウトのタイミングで決済させていただいています。
当時の決済方法で、何か不便な点はありましたか?
大きく困ったことはありませんでしたが、当時の端末はクレジットカードをスライドして読み込む仕様で、いったんお客さまからカードをお預かりする必要がありました。スライドは目の前で行うのですが、なんとなくひとさまのカードをお預かりすることに、抵抗がありました。とくにコロナ禍では、物理的な接触を気にされる方もいらっしゃいましたので、そこはちょっと不便だなと感じていました。
その後、キャッシュレス決済端末「PayCAS Mobile」を新たに導入されました。端末のことは何で知りましたか?
営業の方が来られて、便利な端末がありますと教えてくださって。ちょうど宿をリニューアルするタイミングと重なっていたこともあり、導入することにしました。それが、2022年10月のことです。
導入の決め手は、何だったのでしょう?
クレジットカードの決済後の処理が楽になる点が、一番大きかったです。それまでは、カード決済を行った際に出るレシートの控えを、毎月カード会社ごとに別々に郵送する必要がありました。PayCAS Mobileならそれが必要ないとのお話だったので、とても便利だなと感じたのです。
あとは、操作が複雑ではなく簡単そうなところも、いいなと思いました。
カード会社にレシートを送る作業が一切なくなった
では、実際にPayCAS Mobileを導入してみて、いかがでしたか?
やっぱり、カード会社にレシートの控えを送らなくてよくなったのが、すごくいいですね。
以前は、決済を行うと「お客様用」「店舗控え」「カード会社控え」の3枚のレシートが出てきました。それがPayCAS Mobileでは、出てくるレシートが「お客様用」と「店舗控え」の2枚だけで、カード会社には決済と同時に記録が通信されます。だから、後からレシートを郵送する必要がないのです。これにより、経理担当の負担を減らすことができました。
また、PayCAS Mobileはお客さま自身が端末にカードを差し込むスタイルなので、決済時にお客さまのカードを預からなくてよくなった点もよかったです。操作的にもわかりにくいところがなく、お客さまはみなさんとくに戸惑うことなく自然に操作されています。
それと決済の機会は少ないもののQR決済が、パネルをお客さまにスマホで読み取っていただく形ではなく、こちらが端末でお客さまのスマホを読み取る形になった点も、お客さまにとっては便利になったのかなと思います。
決済可能なクレジットカードのブランド数については、いかがですか?
ほとんどすべてのブランドに対応しているのではないでしょうか。今のところ、決済ができなかったことは、ほぼないと思います。
端末が届いてから使い始めるまでに、何か困ったことはありませんでしたか?
そうですね、そこもとくに困ることはありませんでした。最初の設定は、機械にちょっと強いスタッフが説明書を見ながら行い、すぐに使えるようになりました。
一度、わからないことがあってサポートの方に聞いたところ、使い方をわかりやすく紹介した公式サイトをご案内いただき、すぐに解決したようです。
そこから他のスタッフに使い方を伝え、みんなもすぐに使えるようになりました。
使ってみて、使い心地はいかがでしたか?
やっぱり操作が簡単で、画面ではアイコンなども効果的に使われていて、スマホと同じように直感的に使える設計になっていました。私でもまったく問題なく使えています。
操作に対する反応の遅さや、通信時間の長さなどが気になることもまったくありません。困ったことといえば、この1年間で2回ほど充電をし忘れてしまい、その場で決済できないことがあったくらいです。その時はお客さまにお願いして、翌日決済にしていただきました。
ちりも積もれば…で、トータルでは大きな改善
あらためて、PayCAS Mobileが、宿にもたらしたものとは何でしょう?
今も以前と変わらず、宿泊するお客様の約8割が、クレジットカードで支払われます。だからこそ、その決済手段がお客さまにも私たちにも便利になるのは、なかなか意味があることなのかなと思います。
一回一回の効果はそこまででも、それこそ「ちりも積もれば…」ではないですが、トータルで考えれば大きな改善になるのかなと思います。
上田温泉 祥園・寿久庵の、今後の展望を教えてください。
当宿では、「快眠」をコンセプトにしてから、一人旅のお客さまが増えました。今では男性・女性を問わず、一人旅のお客さまによく泊まりに来ていただいています。あらためて「ゆったりしたい」「癒やされたい」「気分転換したい」といった需要が高いんだなと感じます。数泊されて、お部屋でじっくり仕事される方もいらっしゃいますね。
そこで近年は、朝もお風呂に入るなどゆったり過ごしていただくために、以前は10時だったチェックアウト時間を11時に変更しました。また、快眠を促すヨガのDVDとマットの貸し出しをはじめたり、屋上にハーブ園を設けたりもしています。そうしたコンテンツを通して、今後もお客さまのニーズにしっかり応えていきたいです。
また、せっかくの歴史ある日本式旅館なので、日本茶、折り紙、和菓子作りなどの教室も開催し、外国人のお客さまにもたくさん泊まっていただけるようにしたいですね。そうした中で、今後もPayCAS Mobileは、“頼れるツール”として使い続けることになりそうです。