店舗での会計作業を効率化してくれる「セルフレジ」。スーパーやアパレルショップなどで導入され始めているうえ、ゴルフ場やホテルでも自動精算機が利用され始めました。セルフレジの利用率も増加してきており、導入を考えている方もいるのではないでしょうか。この記事では、セルフレジの導入に際して知っておきたい、セルフレジ利用の現状や課題、導入に関するQ&Aをご紹介します。
さまざまな店舗で見かけるようになったセルフレジですが、実際にはどれくらいのシェアで利用されているのでしょうか。
一般社団法人 全国スーパーマーケット協会ほかが行った調査『2021年 スーパーマーケット年次統計調査』によると、2019年から2021年の過去3年間で、調査に参加したスーパーマーケット(921社)におけるセルフレジの設置率は、11.4%から23.5%に増加しています。
また、2022年に行われたスマートフォンWeb調査では、「セルフレジ(無人レジ)」を「知っているし、利用している」と答えた方は、全体(2108サンプル)の78%。全体の8割近くの方が、セルフレジを利用していることが分かります(出典:LINEリサーチ)。
そして、今後の利用意向については「ぜひ利用してみたいと思う」「機会があれば利用してみたいと思う」と答えた方が、全体の81%にものぼりました。この結果から、今後もセルフレジの利用率は、ますます高まっていくでしょう。
それに伴い、今後もスーパーマーケットだけにとどまらず、アパレル店やゴルフ場、ホテルといったさまざまな場所で、セルフレジや自動精算機の導入が増えていくことが予想されます。
今後も各業界で、その導入率が高まっていくと予想されるセルフレジ。しかし、導入を本格的に検討するなら、セルフレジの抱える課題も事前に把握しておく必要があります。以下で、セルフレジの抱える課題を見ていきましょう。
例えば、小さな子ども連れの方や高齢者の方など、セルフレジの利用自体が難しい方もいます。子どもの面倒を見ながらの商品スキャンやタッチパネル操作は難しい方や、セルフレジの操作がそもそも分からないという方も。視力や聴力の関係でセルフレジが使いづらいため、セルフレジを利用せず有人レジに並びたいという方もいるようです。
セルフレジの利用者によっては、有人レジより会計に時間がかかってしまう場合もあります。あまりセルフレジに慣れていない利用者の場合は、商品のバーコードを探すのに手間取ったり、バーコードがない商品の入力方法が分からなかったりすることも。商品が多いと、その分スキャンに時間がかかり、「有人レジに任せた方が速かった」という場合もあります。また、前に並ぶ利用者がセルフレジの操作に慣れていない場合、その会計が終わるまで待たなくてはならず、有人レジの列より進みが遅いということもあります。
操作方法が分からない場合やエラーが出た場合など、レジ操作やトラブルに対応するためのサポートスタッフが必要となります。操作の取り消し方法がわからない、お札が投入口に詰まったなど、サポートスタッフへの相談内容はさまざま。スタッフ自身がある程度セルフレジに慣れておく必要があり、人員配置の調整も必要です。
会計作業を利用者が行う以上、どうしても懸念されるのがセキュリティ面です。スキャンするふりだけして商品を持ち帰ったり、一部商品をスキャンし忘れてしまったりと、正しい会計作業が行われないこともあります。防犯カメラを設置する、セルフレジのサポートスタッフに監視も依頼するなど、セキュリティ面での対策が必要です。
導入への課題が残るセルフレジですが、それぞれの課題を解消すれば、導入へと踏み切りやすくなります。ここでは、セルフレジ導入時によくある質問について、Q&A形式でご紹介します。
A1:サポート体制を事前に構築しておくことで、操作時間の短縮が見込めるでしょう。操作方法を分かりやすく記載したPOPをセルフレジ前に設置する、セルフレジエリアにサポートスタッフを配置するなど、利用者が困った時にすぐサポートできる体制を整えておきましょう。
A2:セルフレジエリアに防犯カメラを設置する、セルフレジエリアのサポートスタッフに監視も依頼するなど、さまざまな対策が考えられます。また、最新機種のセルフレジには、監視カメラが内蔵されているものもあります。予算に合わせて、適切な対策を用意しておきましょう。
A3:コスト回収に懸念が残る場合は、最初から複数台を導入するのではなく、まず1台から導入してみましょう。また、資金回収計画を1年で考えるのではなく、数年スパンで計画すると導入のハードルが下がります。
セルフレジを購入する場合の導入コスト相場は、セミセルフレジ(商品スキャンは店員が行う)は約100〜150万円、フルセルフレジ(商品スキャンは利用者が行う)は約200〜300万円です。ここに保守費用やPOSシステム利用料も加わるため、導入コストの回収は慎重に計画しましょう。コスト面だけでなく、「顧客満足度が上がる」「感染症対策になる」「レジ担当を他のエリアに配置できる」といったメリットにも目を向けると、導入への足がかりになるかもしれません。
A4:近年ではスーパー以外のさまざまな業種の店舗において、セルフレジの導入事例があります。ここでは、セルフレジ(自動精算機)の一般的な導入事例を、一部業種についてご紹介します。
【レジの種類】
フルセルフレジ
【導入の効果】
・店員一人でも店が回るようになり、シフトの自由度が増した
・接客や品出しなど、他の業務により注力できるようになった
・会計の回転が速くなり、有人レジの応援を呼ぶ回数が減った
【レジの種類】
自動精算機
【導入の効果】
・チェックイン・チェックアウト・カードキー発行を無人化でき、スタッフの負担が減った
・会計以外の業務にスタッフを配置できるため、サービスの質が向上した
・料金の前払いが可能になり、会計が混雑する朝の時間帯にも利用者を待たせなくなった
・外国人の利用者に対し、英語や中国語などの母国語に合わせた対応が可能になった
【レジの種類】
自動精算機
【導入の効果】
・QRコードによるセルフチェックインが可能になり、スタッフの負担が減った
・ゴルフの基本となる「1組4名」に合わせ、「4名様一括精算」が可能になった
・精算明細が確認できる「明細確認機能」で、利用者同士の清算がスムーズになった
【レジの種類】
自動精算機、セルフレジ(食事処)
【導入の効果】
・完全非接触化が進み、感染症予防に役立った
・操作方法が画面上にアニメーションで表示され、高齢者も理解しやすく慣れやすかった
・食事処でもセルフレジを導入し、注文から精算まで完全非接触化を実現した
その他多数事例あり
会計作業の効率化だけでなく、サービスの質や顧客満足度の向上など、さまざまなメリットが得られる「セルフレジ」。導入にはコストやセキュリティなどの課題もありますが、今後もさまざまな業種でセルフレジの導入は進むと予想されます。まずは1台から導入する、人員配置を工夫するなど、無理のない計画を立てつつ、セルフレジの導入を検討してみてはいかがでしょうか。