近年、ますます導入企業が増加しているセルフレジ。自社への導入を考えているものの、「何から始めればよいのか」「事前に知っておくべきことは何か」など、調べることの多さにお困りの方もいるのではないでしょうか。この記事では、セルフレジの導入に際して知っておくべきメリット・デメリットや導入方法、実際の事例などを一通りまとめました。ぜひご一読いただき、導入までのロードマップとしてお使いください。
セルフレジとは、商品バーコードのスキャンや精算などの作業を、利用客自身が行う仕組みのPOSレジシステムです。これまで店員が行っていた作業を利用客が行うため、導入により人件費の削減や回転率の向上が期待できます。
セルフレジの種類は、大きく分けて以下の2種類です。
フルセルフレジ:商品バーコードのスキャンから精算までを、全て利用客が行うレジ
セミセルフレジ:商品バーコードのスキャンは店員が、精算は利用客が行うレジ
その他、商品についたICチップで自動スキャンを行う「カゴごと会計可能なセルフレジ」や、支払方法を現金払い以外に絞った「キャッシュレス型フルセルフレジ」など、業態や目的に合わせたさまざまな種類のセルフレジがあります。
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そして近年、日本におけるセルフレジの普及率は、右肩上がりです。『2021 年スーパーマーケット年次統計調査報告書』では、スーパーマーケットにおけるフルセルフレジの普及率は23.5%、セミセルフレジの普及率は72.2%です。
出典:2021年 スーパーマーケット年次統計 調査報告書(一般社団法人 全国スーパーマーケット協会ほか)
その普及率を示すように、街中でも見かけることの多くなってきたセルフレジ。導入例が増え、利用者がセルフレジの操作に慣れてきているという意味でも、導入へのハードルは少しずつ下がってきているといえそうです。
高い普及率を誇るセルフレジですが、セルフレジを導入するには、そのメリット・デメリットを把握することが大切です。そのうえで、自社に適した種類・コストのセルフレジを導入すれば、業務の効率化が見込めるでしょう。以下で、セルフレジのメリット・デメリットを見ていきましょう。
会計のスピードが上がり、レジの回転率が向上します。その結果、レジの待ち時間の短縮による顧客満足度の向上や、レジ担当の削減による人材不足の解消が見込めます。特にセミセルフレジの場合は、精算におけるヒューマンエラーが起きにくくなり、スムーズな会計が可能になるでしょう。フルセルフレジの場合は、スキャンも利用者が行うため、作業時間が通常の3倍ほどかかると言われています。しかしフルセルフレジは、有人レジを1台設置するスペースに複数台設置できるため、結果的にレジの回転率も上がるでしょう。
セルフレジは機械が精算作業を行うため、釣銭の渡し間違いや預り金の入力ミスといったヒューマンエラーを減らせます。その結果、利用者とのトラブル防止や、締め作業の時間短縮にもつながるでしょう。
通常レジの場合は、1台に1人ずつ店員を配置する必要があります。それに対してフルセルフレジは、複数台に1人をサポート業務として配置すればOKです。セミセルフレジの場合は1台に1人必要ですが、精算機が複数台ついているタイプにすれば回転率が上がるため、担当者を減らすことも可能です。
セルフレジの多くはキャッシュレス決済に対応しているため、セルフレジを導入すると同時に、キャッシュレス決済の導入も行えます。日本のキャッシュレス決済比率は、2019年時点で26.8%となっており、ほぼ年々増え続けています。まだキャッシュレス決済を導入していない企業にとっては、見逃せないメリットといえるでしょう。
出典:キャッシュレス・ロードマップ2021(⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会)
新型コロナウイルスの蔓延により、衛生面への配慮がより必要となった昨今。セルフレジを導入し、現金のやりとりを減らすことで、利用者にも店員にも衛生面での安心感をもたらすことができます。
セルフレジの導入コストは、あまり低いものとはいえません。種類にもよりますが、安いもので1台100万円程度、高いもので1台300万円以上かかるものもあります。導入コストだけでなく、毎月のランニングコストがかかることも。不要な機能は追加せず、購入コストとランニングコストの両方を踏まえて、慎重に検討しましょう。
利用者のなかには、セルフレジに慣れていない方や、操作自体がよく分からない方もいるでしょう。サポート担当の店員を配置するのはもちろん、セルフレジ導入初期は、逆に会計に時間がかかることも想定しておきましょう。
店員が見ていない間に利用者が万引きしたり、単純に支払いを忘れて店を出てしまったり…ということも、セルフレジでは考えられます。サポート担当の店員には、利用者の精算漏れがないかどうか見ておく役割も、割り当てておきましょう。
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メリット・デメリットを把握したら、いよいよ導入の準備です。ここでは、ざっくりとした導入の流れと、導入の際の注意点を見ていきましょう。
まずは自社にセルフレジが必要かどうか、どういったメリット・デメリットが考えられるかを具体的に洗い出し、実際の運用に適したセルフレジを探します。ひとつの業界に特化しているレジメーカーも多いため、複数社から見積もりを取り、コスト面にも配慮しつつ検討します。
発注したいセルフレジの候補が絞れたら、実際に想定している方法で運用が可能か、再度確認します。特に問題がなければ発注し、機器を揃えます。
セルフレジが届いたら、セットアップを行い、実際に使用できる状態にしておきます。社員教育のため、ここである程度使い方のレクチャーを受けておきます。
まずは限られた店舗だけでテスト導入し、そこで出てきた課題を解消してから全店舗へと展開します。テスト店舗で、使い方やトラブル対応といった社員教育・配置換えなどを行い、テスト導入してみましょう。
テスト導入時の課題が解消されたら、全店舗での導入準備を行います。社員教育や配置換えを行い、全店舗にセルフレジを普及させます。
導入の際、いくつか注意しておきたい点があります。事前に把握しておき、導入に役立てましょう。
セルフレジを利用する際は、精算を行うための決済端末も必要になります。それぞれをWeb上で購入することも可能ですが、実際に運用するためには、この2つを連動させる「連動開発」も行わなければなりません。セルフレジの機種を検討する際には、この連動開発にどれだけの時間とコストがかかるかも、しっかり確認しておきましょう。選んだセルフレジとの連動開発がすでに完了している決済端末を選ぶと、時間とコストを削減できます。
業界特化型のセルフレジメーカーが多いだけでなく、それぞれの業態に合わせたカスタマイズが可能なセルフレジもあります。比較検討時によく調査を行い、自社の運用にぴったりなセルフレジを見つけましょう。
コスト面や機能面で自社に合ったセルフレジを選ぶことはもちろん、セルフレジの設置スペース確保や配置に関する準備、社員教育の準備なども忘れずに行いましょう。セルフレジ導入について利用者への周知も行うと、よりスムーズな運用が可能になります。
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セルフレジの導入を検討する際に、気になるのがコスト面です。機種によりかなり幅がありますが、以下で大まかな相場を把握しておきましょう。
相場は約200〜300万円(1台)です。登録機(バーコード読み取り機)と精算機がセットになっているため、合計金額はセミセルフレジより低くなる傾向にあります。
登録機の相場は約100〜150万円(1台)、精算機の相場は約200〜300万円(1台)です。それぞれ別の機器となるため、フルセルフレジよりも合計金額が高くなりがちです。
なるべくコストを抑えたい場合は、フルセルフレジを選ぶとよいかもしれません。また、購入ではなくレンタルやリースを使うことで、コストを下げることも可能ですので、調べてみるとよいでしょう。
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普及率が上がっているセルフレジですが、実際にはどのような形で導入されているのでしょうか。大手企業の導入事例を以下で見てみましょう。
セブン‐イレブンでは、2020年9月からセミセルフレジを順次導入し、現在全国の店舗の約9割に導入が完了しています。今後、2025年までに全国の店舗にセルフレジの導入を進めていくそうです。ローソンでは約5割の店舗が、ファミリーマートでは約4割の店舗が、セルフレジを導入しています。
出典:【独自】セブン―イレブン、セルフレジを25年までに全国展開…人手不足や「非接触販売」に対応(読売新聞オンライン)
市役所や区役所といった各自治体でも、近年セルフレジの導入が進んでいます。三鷹市役所では、都内の役所初となる「キャッシュレス決済」と「セミセルフレジ」を同時導入し、当時話題となりました。年間約6万6千件の証明書等発行に伴う、金銭のやりとりがセルフ化され、業務効率化に役立っていると考えられます。
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ユニクロは、「買い物かごを置くだけで商品スキャンができるセルフレジ」を導入。商品についているICタグを、セルフレジが読み取る方法で、利用者がスキャンする手間も時間も省けます。会計方法もシンプルで分かりやすく、お会計もスムーズです。
各種ファミリーレストランでも、セルフレジが普及してきています。びっくりドンキーでは、会計がフルセルフレジとなっているだけでなく、注文もタブレット端末でセルフ化。また、ネットカフェの快活CLUBでは、入退店の手続きもセルフレジで行えます。食品の購入や席の移動もセルフで行えるようになり、利便性が高まっています。
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セルフレジを導入した企業には、各業態に合ったさまざまなメリットが現れています。以下でその実例を見ていきましょう。
フルセルフレジを導入したことにより、店員一人でも店が回るようになってシフトの自由度が増した。接客や品出しにより注力できるようになり、会計の回転率も上がった。
自動精算機を導入した結果、チェックイン・チェックアウト・カードキー発行をセルフ化できた。スタッフの負担が減った分サービスの質も向上し、料金の前払いも可能になったため、朝の会計の混雑具合も緩和。外国人利用者に対する母国語対応も可能に。
自動精算機を導入したことで、QRコードによるセルフチェックインが可能に。ゴルフの基本となる「1組4名」に合わせ、「4名様一括精算」が可能になり、利便性が高まった。精算明細が確認できる「明細確認機能」で、利用者同士の清算もスムーズに。
自動精算機の導入で完全非接触化が進み、感染症予防に役立った。操作方法が画面上にアニメーションで表示されるため、高齢者も理解しやすく慣れやすかったというメリットも。食事処ではセルフレジを導入し、完全非接触化を実現。
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セルフレジ導入の流れを一通り把握した結果、「思ったより大変そうだ」と感じる方もいるかもしれません。しかし、一度大まかな導入計画を立て、一つひとつ進めていけば、セルフレジの導入は実現できます。分からないことが出てきたときは、ぜひこの記事を読み直し、辞書のように使っていただければ幸いです。各項目には詳細ページのリンクがありますので、そちらも参考にしながら、セルフレジの導入を成功させましょう。